中原伸之(景気循環学会会長・元日本銀行審議委員)
第1部「世界経済 危機脱出への胎動」
- 現在は危機脱出へ向けて何合目くらいに位置するか?
- 2合目から3合目
- A①.の理由、背景は?
- 現在は1929年以来の信用膨張の総決算にあたる。まだ始まったばかりだ。
- 経済危機克服後の世界経済のイメージは?
- 均衡成長。具体的にはそれぞれの国ごとの内では財政収支が均衡し、そして対外的には経常収支がそれぞれに均衡する経済。1960年ころのアメリカ経済のような状態だ。もちろん米中の貿易収支のアンバランスも解消される。
最近の経済は成長に重点を置き過ぎたがために、均衡という経済学上大事な概念を忘れてしまった。もちろん、経済成長率でいえば、これまでのような高い成長率ではなく年率で1~2%、あるいはせいぜい2~3%程度をイメージする。
第2部「問われるニッポンの戦略」
- 日本再生へのキーワードは?
- 生産性向上・サービス経済への疑問・均衡
- A①.の背景は?
- どのように生産性の向上を図るか。日本の1960年代の高度成長は、年率で10%以上もの生産性の向上がもたらしたものだ。いまの中国は違う。資源の投入、すなわち資本と労働力の投入が成長をもたらしている。
さらに、サービス経済化への疑問が大きなテーマとなる。コーリン・クラークが分類してみせた第3次産業の実態が問われる。サービス経済化、知識社会を目指すなどというが、サービス産業の実態は人件費の固まりだ。会社の経営でいえば損益分岐点が非常に高い状態だ。これを引き下げるには一人当たりの賃金を抑えるか、あるいは人員の解雇を進めるしかない。これまでの例をみる限り、やはり製造業が一定以上の地位を占めている経済は安定しているということをよく考える必要がある。例えば自動車産業が凋落する前のアメリカだ。
冒頭に挙げた均衡を重視するということは、GDP信仰、従来の成長期待経済の終わりを意味するということでもある。
アダム・スミスは労働をプロダクティブレイバーとアンプロダクティブレイバーに分けたが、例えば介護産業はどちらだろうか?経済学上の一つの考え方では高齢者から介護者への所得移転ではないか。経済的に何か新しい付加価値を生み出しているわけではない。もちろん政治的、社会的には安定をもららしているのではあるが。