日経CNBCブログ
Caster's Voice

2018.08.10 (金) 河野 恵

平和への願い

花火、甲子園、夏祭り、海水浴…など夏の風物詩が楽しみな季節になりました。
しかしその一方で、8月15日は決して忘れてはいけない“終戦日”です。
終戦から73年の時が経ちました。
今回は、私が今年読んだ本の中で最も心に刺さったこちらの本を紹介します。

鴻上尚史著「不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか」(講談社現代新書)

劣勢だった戦局をうけて日本軍がとった作戦が特攻。
戦争末期、陸軍参謀に「必ず死んでこい」と言われましたが、
組織や上官の圧力には屈せず、
9回出撃し9回生還した元特攻兵の佐々木友次さんの生涯を本にしたものです。

出撃後に生きて帰ると「今度こそ必ず死んでこい」と何度も特攻に出されましたが、
体当たり攻撃ではなく爆弾を落としてアメリカ艦船を沈めることにこだわった
パイロットでした。
その間、故郷では2度も葬式を出され戦死扱いされていました。
この本は、指令を出す側ではなく、受ける側の視点で書かれた書物なので、
とても貴重で、 悲しみ、怒り、絶望、恐怖、祈り…様々な感情がこみ上げ涙が
止まらなくなりましたが、読まなければいけない本だと思いました。

命令した側、命令された側…
なぜ「特攻隊」作戦が生まれたのか、著者の鴻上尚史さんは日本人の思想や宗教観、
地政学的要因にまで言及しその背景を分析しています。

空気が流れを作る日本の悪しき伝統、
日本人の村社会的な性格は今も昔も変わらないのかもしれないと、
ふと考えさせられました。
昨今、スポーツ界や政界などで様々なニュースが飛び交っていますが、
誰かが声を上げないと隠ぺいされてしまう事実が多々あるのでしょう。


今から6年前の夏。
当時、山口県のテレビ局でアナウンサーをしていた私は、
終戦の日特集を作ることになりました。

山口県周南市の大津島には、敵の空母を沈めるため人間が操作して体当たりする
人間魚雷・回天の訓練基地跡があります。
戦時中は公にされなかった存在です。
毎年、乗組員を見送る側だった元隊員の方が終戦記念日の前後になると
東京から慰霊碑にお参りに来ると聞いて密着取材をさせていただきました。
慰霊碑の前でただただ涙を流していた姿には、とても心が締め付けられました。
見送らなければならない当事者でしかわからない極限状態の感情が、
大量の涙となって溢れていたように見えました。
そして…この取材からわずか3か月後、元隊員はがんのため旅立たれました。

この先、戦争体験者は少なくなっていき、必ずいなくなってしまいます。
そうした中で、どう語り継いでいくのか。

テレビやパソコン、スマートフォンが当たり前になっている今。
73年前までは戦時中だったとは到底想像もできないほどの経済成長をし、
豊かな生活となっていますが、二度と繰り返してはならない戦争の悲惨さを
風化しないように語り継いでいきたいです。

世界の恒久平和を願います。