第2弾《後編》
2018/9/30 公開
武者陵司さんインタビュー「日経平均株価10万円のロードマップ」
~武者陵司氏(株式会社 武者リサーチ 代表) スペシャルインタビュー~
聞き手:「マーケッツのツボ」でおなじみ!鈴木雅光氏(有限会社JOYnt代表)
いよいよ米中貿易戦争の火ぶたが切って落とされました。米国は7月10日、中国からの輸入品2000億ドル相当を対象として、新たな関税リストを発表。 中国商務省は、これを「受け入れ難い」として、対抗措置を打ち出す方針です。マーケットは今後の成り行きを慎重に見守っています。 世界1、2位の経済規模を持つ両国間の貿易戦争は、事態が深刻化するほど、世界経済にネガティブなインパクトを及ぼすのは必至。 この貿易戦争はどこまで深刻化するのか。その時、マーケットはどうなるのかを、武者リサーチ代表の武者陵司さんに分析してもらいます。
武者 陵司(むしゃ りょうじ)
エコノミスト
株式会社 武者リサーチ 代表

1949年長野県生まれ。1973年横浜国立大学経済学部卒業後、大和証券に入社。
1988年大和総研アメリカでチーフアナリストとして米国のマクロ・ミクロ市場を調査。
1997年ドイツ証券調査部長兼チーフストラテジスト、2005年ドイツ証券副会長を経て、2009年株式会社武者リサーチを設立。
主な著書
『日本株大復活』(PHP研究所)
『新帝国主義論』
『「失われた20年」の終わり地政学で診る日本経済』(東洋経済出版社)
『超金融緩和の時代』(日本実業出版社)
『結局、勝ち続けるアメリカ経済一人負けする中国経済』(講談社+α新書)
『史上最大の「メガ景気」がやってくる』日本の将来を楽観視すべき五つの理由(KADOKAWAより2018/6/29発売)
―――となると、早晩にも米中貿易戦争は収束に向かい、それを好感してマーケットもリスクオンに変わるということですね。
武者氏そうです。それはNYダウの値動きを見ても明らかです。

7月6日に米国は、中国からの340億ドル相当の輸入品に対する追加関税を発表し、10日には2000億ドル相当の輸入品に対しても追加関税を発表しましたが、株価は上昇しています。
6月27日にかけては下落続きでしたが、これは明らかに、マーケットが過剰反応したのではないでしょうか。

逆にこれからは、上昇に転じるはずです。NYダウの2万5000ドル回復はもちろん、日経平均株価も大きく上昇し、年末にかけてラリーが始まるでしょう。

そもそも、新興国や債券市場から投資資金が引き上げたものの、その先の行き場は限られています。
どこに行くのかといえば、米国の株式市場であり、日本の株式市場です。
―――しかし、日本企業はどちらかというと、「負け組」のイメージが強いのですが、それでも株価は上がるのでしょうか。
武者氏日本企業が負け組というのは、とんでもない誤解です。
確かに平成30年間を通じて、日本は韓国、中国、台湾というアジア諸国に、ハイテクビジネスの中枢ともいえる半導体、液晶、パソコン、スマートフォン、 テレビの分野で敗北し、ハイテクサイバー空間やインターネットのプラットフォームは、圧倒的に米国が支配しています。

確かに、それだけを見れば、日本企業は負け組なのかも知れません。でも、それなら日本企業がなぜ史上最高の利益を上げているのでしょうか。
それは、他の国では作れないオンリーワンの領域をたくさん持ち、そこで独占的なビジネスを展開しているからです。
ナンバーワン領域は無くなりましたが、オンリーワン領域で、日本企業は非常に強味を発揮しています。

今後、ハイテクの中枢分野は大変な激戦区になり、半導体や液晶の価格は恐らく暴落するでしょう。

しかし、その周辺や基礎の分野は、今や日本企業の独壇場であり、価格競争が起こりにくくなっています。
しかも、米国にしても中国にしても、今後、ハイテク分野における覇権を握るためには、どうしても日本企業が供給する設備や部品、材料が必要になります。

こうした国際分業上の優位性によって、日本企業の収益や日本経済そのものが、為替や貿易摩擦に影響を受けにくくなっているのです。
こうした点からも、日本企業が決して負け組ではないことが分かりますし、それはいずれ株価にも反映されていくでしょう。
―――それにしても、武者さんがおっしゃる「日経平均10万円」は、いささか言い過ぎなのではという気もします。根拠はどこにあるのでしょうか。
武者氏日経平均株価10万円という展望は、決して希望的観測などではありません。実現可能性は極めて高いと考えています。

根拠は、今も申し上げたように、日本企業がナンバーワン領域ではなくオンリーワン領域で強みを発揮しており、過去最高の収益力を実現していること。
それに加え、中国が日本に取って代わる形で経済的に台頭しており、米国にとっては日本よりも脅威になってきたことが挙げられます。

中国は強大な経済力を背景に、自らの領土・領海を拡大しようとしていますが、米国がそれに対抗するためには、アジア最大の民主主義国家である日本との連携を、今まで以上に強める必要があります。
米国にとって日本は重要なパートナーであり、両国の関係性は今まで以上に緊密になるでしょう。

これは、日本経済にとってポジティブです。さらに、もうひとつ大きな根拠があります。

それは、これから株価革命が起こる可能性があることです。 過去の株式益回りと社債利回りを比べると、1972年から1985年頃まで、日本では株価が上昇し、株式益回りは社債利回りの半分程度の水準まで低下しました。

1985年から1990年にかけて、株価はさらに上昇して、株式益回りは社債利回りの3分の1程度まで低下しています。

その後、バブル崩壊、株価下落を受けて、株式益回りと社債利回りの関係は逆転し、現在は株式益回りが社債利回りを大幅に上回っています。
それだけ、日本の株価が超低バリュエーションになったということです。

この異常事態がいつまでも続くはずがありません。どこかで両者は再び逆転するでしょう。
そして、これまで日本株のPERは10倍が当たり前でしたが、今後20倍、30倍が当たり前になるなかで、日経平均株価10万円が示現すると考えています。
鈴木 雅光
(すずき まさみつ)
岡三証券、公社債新聞社の記者などを経て独立し、有限会社JOYntを設立。

投資信託や資産運用を中心にして雑誌やオンラインメディアに寄稿する他、出版プロデューサーとして220冊以上の単行本の企画・制作に関わる。

2018年3月まで、日経CNBC「マーケッツのツボ」の聞き手として出演。テレビ番組、ラジオ番組の企画・制作に加え、イベントの運営にも携わる。

またポッドキャストで展開している音声コンテンツ、「はるラジ」では、現在22万人もの登録者を集めている。
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