第4弾《後編》
2018/12/26 公開
マーケットで生き残るために必要なこと
山和証券執行役員ディーリング部長・工藤哲哉
聞き手:「マーケッツのツボ」でおなじみ!鈴木雅光氏(有限会社JOYnt代表)
今年に入ってから、国内株式市場は冴えない展開が続いています。昨年秋口のラリーで大きく稼いだ投資家にとって、今年は投資環境が一変したように見えるでしょう。 それでも、株式投資を続けていく以上、どれだけ厳しい局面であったとしても、生き残っていかなければなりません。 このマーケットの変化にはどのような背景があるのか、厳しい局面でも生き延びていけるトレーダーになるにはどうすれば良いのかを、 20年以上にわたって株式市場と対峙し、利益を上げ続けてきた、山和証券執行役員ディーリング部長の工藤哲哉氏に伺いました。
工藤哲哉(くどうてつや)
丸万証券(現東海東京証券)入社。オプションを中心にして運用の世界に入る。

大東証券(現みずほ証券)に移籍し、現物株式および派生商品のディーリングに従事。
アイザワ証券に移籍してからはディーリングと共に人材育成に取り組む。

その後、シンガポールに渡りヘッジファンドの立ち上げに関わり、帰国後、山和証券に入社。
執行役員ディーリング部長を歴任。
―――下降局面に入った今、どのような戦略を考えれば良いのでしょうか。
工藤 ここ数年の上昇局面において、日本株運用で最も大きな利益を上げたのは、ロングオンリーのファンドでした。

2013年1月からスタートしたアベノミクスによって、株価は右肩上がりで上昇したのですから、当然のことです。

しかし、いつまでも上昇局面が続くことはありません。上がったものは必ず下がります。
その下げ相場に直面した時、ロングオンリーのファンドに出来ることといえば、株式のポジションを下げ、現金比率を上げることくらいです。そうすることによって、株価下落の影響を最小限に抑えるのです。

しかし、グローバルな視点で見ると、上げ相場、下げ相場のいかんに関係なく、着実にリターンを上げているファンド群もあります。
ヘッジファンドがそれです。ヘッジファンド運用のなかでも、買いだけでなく、売りも組み合わせたロング・ショート戦略を取っているファンドは、下げ相場に直面したとしても、運用成績が大幅に悪化することがありません。
売りを組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクヘッジが出来ているからです。

僭越ながら、個人投資家の方にひとつだけアドバイスできるとしたら、それは売りを覚えることです。
日本人の多くが、「株は買うもの」であり、「売りなんてとんでもない」と思っていらっしゃいます。

もちろん、純粋な長期投資であれば、ロングオンリーの戦略もありですが、デイトレードやスイングトレードなど比較的、時間軸の短い「運用」を行う場合は、売りも組み合わせた方が、ポートフォリオ全体の最適化が図れます。

なので、運用することを前提に株式を保有している方は、先物取引の売りでも、信用取引の売りでも良いので、まずは売りを覚えるようにして下さい。

それでも「売りはどうも・・・・・・」という方は、キャッシュポジションを高めておきましょう。
今のような難しいマーケットで、わざわざポジションを持つ必要はありません。
今のうちに、利が乗っている銘柄を整理し、現金をたくさん持っておくのです。
そして、株価の大幅な調整が生じたら、そこをすかさず拾いに行きます。

いつ大きな調整が来るのかは誰にも分かりません。ただ、今の状況はかなり異常です。

そもそも、外国人投資家が日本株を何兆円売り、一方で日銀がETF買いを通じて何兆円、日本株を買ったのか、よく考えてみて下さい。
いくら金融緩和が必要だからといって、一国の中央銀行である日銀が、ここまで大量に株式を買うこと自体、ありえないことです。
それだけ、日本の株式市場における日銀のプレゼンスが、これまでにないほど高まっているのです。

したがって今後、金融政策が本格的に転換した時、日銀への依存度がかつてないほど高くなってきた日本の株式市場がどうなるか、そのリスクには十分警戒しておくべきでしょう。
いつ本格的な調整局面が訪れるかは分かりませんが、それが間もなく起こることを想定し、準備することが大事です。
―――工藤さんはこれまで、さまざまな相場の局面を経験し、今も生き残っていらっしゃいます。投資で失敗しない方法はあるのでしょうか。
工藤 相場で失敗しないなんて、絶対にありえません。

あのジョージ・ソロスやウォーレン・バフェットでさえ、「自分は間違いを犯す」と言っているのです。

彼らに比べたら、私も含めて大半のマーケット参加者は「普通の人」に過ぎません。失敗するのは当然なのです。
だから、自分は必ず間違いを犯すのを前提にして、相場と対峙する必要があります。

何を言いたいのかというと、間違えた時は素直に認めましょう、ということです。

相場は自然と同じで、予測するのが困難です。常に変化します。

したがって、まず自分が間違っていることを認めるポイントを持ちましょう。

ただし、それはポジションを持つ前に行うこと。ポジションを持つと、どうしても物の見方にバイアスが掛かります。
物事を一番冷静に判断できるのは、ポジションがない時なのです。

負けを認めるポイントとは、つまり株式を買うならば「ここまで下げることはない」という水準です。
その水準を見極めるためには、この銘柄の株価は今後、こうなるだろう、という根拠を考えること。
「ここまで値上がりしたら、売却して利益を確定させる」という目標株価が見えてくれば自ずと、「それならば、いくら何でもここまで下げることはないだろう」という、自分の間違えを認めるポイントも見えてきます。

投資で失敗しないための方法はありませんが、長くトレードを続けたいのであれば、自分がこれから行おうとしているトレード、持とうとしているポジションの目的、根拠をしっかり持つことです。
自分はどういう理由でこの銘柄を選んだのか、それは長期保有が前提なのか、それともモメンタム重視で短期の値動きを取りに行こうとしているのか、といったことをしっかり考えるようにしましょう。
それが、トレードを長く続けていくためのポイントです。
―――もし、自分が取ったポジションが間違えていると思った時は、どう対処すれば良いのでしょうか。
工藤 その時は、損切りすることです。間違った判断を下したのだから、それをいつまでも引き摺るのはおかしな話です。

もちろん、「損切りしたら損失が実現してしまう。持ち続ければいつか戻って損失を回復できるかも知れない」という人もいますが、持ちこたえているうちにさらに株価が下落したら、戻るにしても相当の時間を要します。

何よりも、今は相場自体が下降トレンドに入っているのですから、そうなるリスクの方が高いと考えるべきでしょう。
回復するまでの時間が長ければ長いほど、そのお金は利益を生み出さないので、ポートフォリオの効率が非常に悪くなります。
そんなことをしている時間があるならば、さっさと損切りして、もっと期待できる他の銘柄に乗り換えた方が良いでしょう。

あと、損をした時にやってしまいがちなのが、ナンピンです。「十分に引き付けて行うならナンピンも有効」とおっしゃる方もいますが、よく考えてみて下さい。
ナンピンって、自分が判断を間違っているから損をしているのに、その間違えたものに対してポジションを増やしていく行為です。

おかしいと思いませんか。

私は、損失が膨らんでいくなか、それをじっと耐えているのも、ナンピンを入れて平均の買いコストを下げようと努力するのも、基本的には無意味であると考えています。
これらの行為は、自分の負けを認めたくないから行われるものですし、負けを認めない限り、いろいろな意味でコントロールできなくなります。

自分自身のメンタルだってそうです。

損失が膨らむほど、人は冷静さを失い、それによって取った行動が裏目に出て、さらに負けがかさむというケースは、いくらでもあります。
損失が生じた時は、さっさと自分の負けを認めて、他の畑に行けば良いのです。
鈴木 雅光
(すずき まさみつ)
岡三証券、公社債新聞社の記者などを経て独立し、有限会社JOYntを設立。

投資信託や資産運用を中心にして雑誌やオンラインメディアに寄稿する他、出版プロデューサーとして220冊以上の単行本の企画・制作に関わる。

2018年3月まで、日経CNBC「マーケッツのツボ」の聞き手として出演。テレビ番組、ラジオ番組の企画・制作に加え、イベントの運営にも携わる。

またポッドキャストで展開している音声コンテンツ、「はるラジ」では、現在22万人もの登録者を集めている。
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