第8弾《前編》
2019/3/1 公開
嶌峰義清氏インタビュー「2019年の株価 下値のメドは1万6000円」
聞き手:「マーケッツのツボ」でおなじみ!鈴木雅光氏(有限会社JOYnt代表)
2019年の株式市場がスタートしました。 大発会はNY市場の下落を受けて、日経平均株価は前年末比452円安となりましたが、その後は徐々に回復基調をたどり、2万1000円回復を睨む展開となっています。 2012年12月から続く日本の景気拡大局面は、戦後最長である73カ月に並びました。 さらに景気拡大局面の記録を伸ばすのでしょうか、それとも調整局面へと入っていくのでしょうか。 第一生命経済研究所取締役の嶌峰義清さんに、今年の景気と株価の行方を伺いました。
嶌峰 義清(しまみね よしきよ)
株式会社第一生命経済研究所取締役・首席エコノミスト

1990年3月 青山学院大学経済学部卒。
1990年4月 岡三証券入社。岡三経済研究所を経て、1992年日本総合研究所入社。
日本経済研究センターへ1年間出向を経た後、1998年5月 第一生命経済研究所入社。
米国経済担当、日本経済担当などを経て、現在は金融市場全般を担当。
2011年4月より首席エコノミスト。2018年6月より現職。
日本ファイナンス学会会員。
―――日本の景気について伺いたいと思います。今は好景気なのでしょうか。それとも調整局面に入りつつあるのでしょうか。
嶌峰氏まず世界経済から見ていきましょう。

日本を含む世界の景気は、循環的にみると、2年程度続いた生産拡大局面から、徐々に在庫調整局面へと移行しつつあります。
2016年後半から、世界経済は在庫調整を終え、生産拡大局面に入ったのですが、通常だと、生産拡大局面は2年から2年半で終わるので、その観点からすれば、いよいよ今年で生産拡大局面が終わることになります。

となれば、日本の景気だけが好調というわけにはいきません。実際、今の日本は、すでに在庫調整局面に片足を突っ込んでいる状態です。昨年来、日本の株価が頭打ちになっているのはそのためです。
―――単なる在庫調整局面に止まらず、景気が完全な後退局面に入るリスクはあるのでしょうか。
嶌峰氏否定はできません。その鍵を握っているのが金利です。

金利がどこまで上がっているかによって、リセッション入りするかどうかが見えてきます。
なかでも、日本より米国の金利情勢が気になります。前述したように、世界経済のけん引役は米国だからです。

では、米国の金利情勢はどうなるのでしょうか。

2018年、FRBは合計で4回の利上げを実施しました。今年も引き続き金融引締め政策が続き、あと2回くらいの利上げを行うのではないかと見られています。
現時点では、景気に軽くブレーキを掛ける程度の水準ですが、過去の経緯を見ると、利上げが行われるなかで在庫調整に入ると、米国経済はリセッション入りする恐れが濃厚になると言われています。

では現状はどうなのか、ですが、今年秋にはトランプ減税の効果が切れます。
減税効果が切れるなかであと2回、利上げが実施され、かつ在庫調整リスクが高まれば、米国経済は確実にリセッション入りするでしょう。
時期的には10-12月期が、最も有力と見ています。

そして、その影響をモロに受けるのが日本です。米国経済がリセッション入りすれば、消費が落ち込みます。
当然、これまで日本経済のけん引役となってきた米国向けの輸出が伸びなくなりますから、設備投資も落ち込みます。
また、日本の個人消費は2018年から停滞しており、2019年にそれが急回復するとは思えません。引き続き、個人消費は低迷が続きます。

さらに言うと、米国経済がリセッション入りすれば、為替は米ドル安・円高に振れるでしょう。株価も世界的に調整局面入りです。
これだけネガティブな要因が山積みになれば、日本経済も落ち込まざるを得ません。ただ、目先の株価に関していえば、ポジティブな動きになる可能性もあります。
―――なぜポジティブな動きになるのでしょうか。
嶌峰氏株価は、先行き不透明感を何よりも嫌います。

だとしたら現状、どのような不透明要因が考えられるでしょうか。
まずグローバルで考えると、第一が米中貿易交渉の行方であり、第二が3月29日に予定されている、イギリスのEU離脱です。

では、これらの不透明要因はポジティブな材料なのか、それともネガティブな材料なのかということですが、米中貿易交渉は比較的ポジティブです。
完全合意は無理で、恐らく部分合意になると思われますが、いくらトランプ大統領といえども、今のように米国の株価が不安定な状況下で、 90日の猶予期間が明ける3月1日に、いきなり中国からの輸入品に対する関税率を25%に引き上げるようなことはしないだろうと思われます。
交渉期間の再延長ともなれば、株価にとってはポジティブです。

次にイギリスのEU離脱問題ですが、これもイギリスの強制離脱という事態にさえならなければ、株式市場にとってはポジティブ要因です。
少なくとも、EUがイギリスの強制離脱を望んでいませんし、イギリスも出来る限り強制離脱は避けたいという想いで、これまでEUとの交渉に臨んできましたから、 イギリスがそれを望まない限り、強制離脱にはならないと見ています。

つまり、米中貿易交渉にしても、イギリスのEU離脱にしても、確かに不透明要因ではありますが、いずれも交渉期限の再延期ということになれば、目先的に株価を押し上げる効果は期待できます。
鈴木 雅光
(すずき まさみつ)
岡三証券、公社債新聞社の記者などを経て独立し、有限会社JOYntを設立。

投資信託や資産運用を中心にして雑誌やオンラインメディアに寄稿する他、出版プロデューサーとして220冊以上の単行本の企画・制作に関わる。

2018年3月まで、日経CNBC「マーケッツのツボ」の聞き手として出演。テレビ番組、ラジオ番組の企画・制作に加え、イベントの運営にも携わる。

またポッドキャストで展開している音声コンテンツ、「はるラジ」では、現在22万人もの登録者を集めている。
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