第10弾《前編》
2019/4/24 公開
内田衛氏インタビュー「注目テーマはキャッシュレス社会とネット通販」
聞き手:「マーケッツのツボ」でおなじみ!鈴木雅光氏(有限会社JOYnt代表)
昨年末にかけて株価は急落。その後、世界的に景気はスローダウンすると言われながらも、株価は徐々に回復してきています。 投資家としては、今のこの動きに乗るべきか、それとも慎重に下げ相場を待つべきか、悩ましいところでしょう。 実績を上げている個人投資家は今、何を考え、どう動こうとしているのでしょうか。投資家として34年のキャリアを持つ内田衛氏に話を伺いました。
内田衛(うちだ まもる)
大学卒業後、大手生命保険会社に勤務。
現在は専業投資家。

株式投資は高校時代からで、34年のキャリアを持つ。
平成バブルの崩壊、リーマンショック、東日本震災など、数多くの相場の修羅場を凌ぎながら、着実に資産を殖やしている。
―――間もなく新年度相場のスタートですが、今の相場環境をどのように見ていますか?
内田氏正直なところ今年は厳しい。

潮目が変わってきたのではないでしょうか。そろそろ景気も後退局面に差し掛かっていると思います。
根拠はいろいろあります。

第一に中国経済。
2018年の自動車販売台数が、28年ぶりに減少しました。 中国自動車工業協会が発表したところによると、2018年の自動車販売台数は、ディーラー向けが4.1%減少して2370万台でした。
総自動車販売台数が2.8%減の2810万台で、小売り販売が6%減少したそうです。自動車は裾野が非常に広い産業なので、影響が懸念されます。

第二は日本の雇用情勢です。
富士通が2月、早期退職制度により3月末までに2850人を削減すると発表しました。 大企業が大規模なリストラを断行したというニュースは、ここ久しく聞いていなかったので、これは何か変化の兆しではないかと考えています。

そして第三が米国の利上げストップですね。 米FRBのパウエル議長は、世界的な景気減速を懸念して、利上げを停止する方針を示しました。つまり、景気がいよいよ悪くなりつつあるということです。

これだけ悪材料が揃ってくると、普通なら株価は下がります。
しかし、今年に入ってからの株価を見ると、じわじわとではありますが、上昇しています。正直、やきもきしてしまいます。

なぜ、下がらないのか。理由は、自社株買いにあると考えています。 米国では今年、いよいよトランプ減税の効果が無くなりますから、株価は景気低迷を織り込んで下げるはずですが、自社株買いを強烈に進めている企業が多く、株価が上がってきました。
日本でもソフトバンクグループが、6000億円規模の自社株買いを行っています。

ただ、自社株買いによる株価の押し上げは、長続きしません。3月決算企業の数字が5月中旬くらいから発表されますが、恐らく来期業績見通しは、多くの企業が保守的に見積もってくるでしょう。 その時、売り圧力が強まるのではないでしょうか。
―――となると、ゴールデンウイーク前後に株価は崩れるということですか。
内田氏戦略としてはセル・イン・メイだと考えています。

今年のゴールデンウイークは10連休ですから、この間に何が起こるか予測がつきません。
為替市場の流動性が薄くなっているところを狙って、米ドルを売り仕掛けてくるような勢力もいますから、急激な円高に見舞われることも十分に考えられます。
それに巻き込まれないようにするためにも、出来れば4月中に売れるものは売っておき、キャッシュポジションを高めておきたいところです。

一般的に夏と秋は相場が悪いので、わざわざ株式のポジションを高めて巻き込まれる必要は、どこにもありません。
特に注意していただきたいのは、アベノミクス相場から株式投資を始めた方たちです。
アベノミクス相場がスタートしたのは2012年12月からですが、現在に至るまでに幾度となく、ちょっとした下げ相場がありました。
2015年8月のチャイナショックや、2016年6月のブレクジット、同年11月のトランプ大統領誕生などがそうですが、 この時はいずれも株価が上昇トレンドの最中だったこともあり、一時的に株価が下げた時に買えた投資家は、相応の成功を収めることが出来ました。

しかし、次に来る下落局面は、株価が天井を打ち、下降トレンドのなかでの下落になるため、そこで買い出動しても、戻らない恐れがあります。
目先、日経平均株価が1万9000円前後まで下げたとしても、何も不思議はありません。

アベノミクス相場で儲けた人たちは上昇相場しか知りませんから、相場がピークアウトになっているのに売ることができず、 本格的なベア相場が来ても逃げられず、これまでの利益を失う恐れがあります。
―――内田さんも実際にそういう経験があるのですか。
内田氏私の場合、リーマンショックで大きくやられた経験があります。

それまで1億2000万円くらいまで資産を殖やしていたのですが、あの暴落で4000万円まで目減りしてしまいました。

なぜ、ここまで大きな損を出したのかというと、もちろん相場が大きく崩れたこともありますが、やはり信用取引でレバレッジがかかっていたからです。
株式市場はこれから大きく崩れることも想定しておいた方が良いと思います。

だとしたら、信用取引で目いっぱいポジションを持つようなことはせず、現物のみで売買するべきでしょう。
特に今年は、くれぐれも慎重に臨む必要があると思います。
リーマンショック後の底値から見れば、日本の株価は10年間、上昇し続けてきました。
この10年間、株式投資で儲かった人は、相場環境が良かったからでもあります。

しかし、好調だった相場環境は、いよいよ変調を来たしつつあります。
今の国内株式市場は、企業の自社株買いだけでなく、日銀がETFを通じて株価の買い支えを行っています。
その金額は年間6兆円です。とても普通の状態とはいえません。もし、買い支えが無くなったら、株式市場の需給関係は一気に悪化します。
しかも、10月には消費税の増税が控えており、消費が大きく落ち込む恐れがあります。 これらの点から考えても、今年から来年にかけては、危機感を持っておいた方が良いでしょう。
鈴木 雅光
(すずき まさみつ)
岡三証券、公社債新聞社の記者などを経て独立し、有限会社JOYntを設立。

投資信託や資産運用を中心にして雑誌やオンラインメディアに寄稿する他、出版プロデューサーとして220冊以上の単行本の企画・制作に関わる。

2018年3月まで、日経CNBC「マーケッツのツボ」の聞き手として出演。テレビ番組、ラジオ番組の企画・制作に加え、イベントの運営にも携わる。

またポッドキャストで展開している音声コンテンツ、「はるラジ」では、現在22万人もの登録者を集めている。
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第10弾《後編》

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